2014年

8月

26日

バルサルタン臨床論文改ざん事件の中にみる査読誌出版社の利益相反問題

同僚から教えてもらった新聞記事の中に、興味深い指摘がありました。
降圧剤「バルサルタン」の臨床試験にノバルティスファーマ社員が関与し、改ざんデータを利用した論文を投稿・販促利用していた問題についてです。薬事法にお ける誇大広告の疑いでノバルティス社が刑事告訴されましたが、それだけでなく、臨床試験実施研究室への多額の奨学寄附金やねつ造論文を基に関連学会がガイ ドラインを策定し、さらには学会との癒着疑惑など様々な問題が浮かびあがっています。
 
 
毎日新聞は特集で複雑なこの事件を分かりやすくまとめて報道していたのですが、その中で興味深い指摘がありました。
こ れまで、製薬会社と医療関係機関の癒着疑惑は数多くあり、それを避けるためにも昨今論文における利益相反有無の明示は一層厳しく取り扱われています。その利益相反についてはよく聞く話題ですが、今回毎日新聞で指摘されていた出版社と企業の利益相反疑惑は初めて見るものでした。以下、毎日新聞 2014年6月 2日(月)13版 p.10(強調は筆者によるもの)からの引用です。
 
 
”ランセットは世界で最も権威ある医学誌の一つだ。当時ノ社に勤めていた男性は「降圧剤を巡る業界の競争は激しい。一流誌ランセットの論文があったから他社をリードできた」とい言う。
だがそう単純ではない。バルサルタンの広告代理業務を担ったのは、ランセットを発行する出版社の日本支社だった。ここには隠れた利権が存在していた。
論文の著作権は出版社にある。このためノ社に限らず、製薬会社は自社の薬に有利な臨床試験の論文が出ると、医師に配るため論文の別刷りを大量に発注する。製薬会社がスポンサーになった臨床試験の論文は出版社にとって「金づる」というわけだ。”
 
” ノ社はバルサルタン論文の別刷りの購入部数を明かさないが、英国では1本の医学論文の別刷りが出版社に2億円以上の収入をもたらした事例も報告されてい る。製薬72社の公表資料を毎日新聞が集計したところ、論文の別刷りなど医師に渡す「医学・薬学の関連文献」に、12年度だけで200億円以上が製薬会社から支出されていた。”
 
 
これまで、査読システムの構造的な問題は指摘されつつも、査読により科学論文の妥当性を証明する行為はある意味神聖視されるような、当然のものとして受け入れられてきました。
毎日新聞の指摘は事実の羅列であり、疑惑ですらありません。しかし、論文誌や査読問題に利益相反の疑いが生じ得るということ自体、これまで考えが及ばず、新鮮な驚きでした。
 
この問題は、昨今の著作権料の高騰化に加えて、医薬品を販売するMRが医者など医療関係者に文献を配布するという特殊な行動が背景にあります。これは、日本固有の文化であり、海外で普通に行われているものではありません。
日本の薬事法で医療関係者への医薬品に関する情報提供が義務付けられており、製薬企業は それを根拠に論文を医者に提供します。その行為は、日本のMRの営業の大きな要素を占めています。
つまり、組織運営のため、製薬企 業は他業界よりも膨大な量の文献複写を行う必要があるのです。その弱みにつけこまれて著作権管理団体から狙い撃ちされていたりもするので、製薬企業は非常 に著作権問題のコンプライアンスに敏感です。営業のため大量の文献が必要になった場合は複写のための著作権料の支払いよりも別刷りの購入のほうが安価であ るなどの話も聞いたことがあります。
文献の入手が業務上必要であり、それが莫大な量となれば、出版社の大きな収入になります。査読論文誌に企業が求める論文が掲載されることが出版社の利益に繋がる。それは、たしかに利益相反が疑われる余地がある構造かもしれません。論文誌の科学的正当性を維持するために、出版社と査読委員会の独立性の証明など、一層注意した運営が求められるのではないでしょうか。
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2014年

8月

15日

「アンネの日記」破損事件にみる海外と国内における報道の違い:「アンネの日記」破損事件クラウドファンディング報告・講演会に行ってきました

ALIS定例会特別企画 クラウドファンディング報告・講演会に行ってきました。

概要

日時:8月9日(土)14:00~(受付13:30〜)

場所:筑波大学春日エリア メディアユニオン3階共同会議室

タイムテーブル:

 14:00〜14:05:冒頭説明

 14:05〜14:25: 事件概要と調査報告/赤山みほ

 14:25〜14:55:日本最大級の読書SNSの中の人から見た図書館とアンネの日記破損事件/大西隆幸

 15:05〜15:35:図書館と資料毀損: 表現の自由の視点から/木川田朱美(欠席)

 15:35〜16:05:アンネの日記破損事件、海外での受け止めかた/アルファブロガーfinalvent

 16:05〜16:35:質疑応答

 16:35〜17:00:茶話会(フリートーク)

 (当日は木川田さんが欠席)

 

 

感想

「アンネの日記」破損事件を受け、被害図書館に「アンネの日記」を寄贈する目的で行われたクラウドファンディングの報告会に参加してきました。

実際の調査報告だけでなく、識者の方からの「アンネの日記」破損事件、及びクラウドファンディングへの考察が良い意味でとても面白く、参加して良かったと心から思えました。今回特に考えさせられたのは、「アンネの日記」破損事件からみる国内と海外のメディア報道の違いと、それに対して私達がいかに無関心かということです。詳しくは発表されたfinalventさんのブログで書かれていますが、当日は時系列を追って事実を整理し、それに対する考察という形で非常にわかりやすくお話を聞くことができました。

 

 

「アンネの日記」破損事件を最初に”事件”として報じたのは、日本版ハフィントンポストだといわれています。その記事を執筆したのは、公共図書館を取材し書かれた新書「つながる図書館」の著者であるいがやちかさんでした。

 

 

事件の真相は、刑事責任能力の問えない犯人が自らの主張のため無差別に図書の破棄を行っていたというものです。いがやちかさんの報道では、図書館の蔵書であることが意味を持っていました。図書館の蔵書の破棄は図書館の自由問題にも繋がりますし、その面からの問題も見える報道です。

 

しかし、国際的に広まったこの事件は、海外においては「アンネの日記」が破損されたことが最も重要な問題でした。SWCという組織が極東の島の小さなニュースを拾い上げ、それに対する声明を出したことで、「アンネの日記」破損事件は図書館の蔵書の破棄問題ではなく、反ユダヤ主義に関する問題となってしまっていたのです。

私が国内で報道を見ながら感じていた違和感はこれだったのかなと思いました。公共図書館での自由問題は過去にも例があり、個人の主張にともなって特定の図書が破棄されることは(悪いことですが)珍しくありません。なのに、この事件だけなぜか社会的に大きく報道されており、騒ぎすぎなのではないか、あるいは、図書館の自由問題に帰結しないのはなぜなのだろうかと思っていました。

実際は、図書館の問題ではなく、国際的な宗教・思想問題の話であったのです。果てには日本人の第二次世界大戦での被害者意識(戦争被害者として共感?『アンネの日記』日本で人気の理由 イスラエル紙が分析)なんて話が出てくるのですから、それも当然ですよね。

 

いがやちかさんが報道された際、「アンネの日記」の破損が図書館の問題ではなく、国際的な問題になるということが理解されていたのかどうかはわかりません。国内では図書館の自由問題と絡めた報道はなされていますが(『アンネの日記』事件で揺れる図書館関係者――運営の自由か、閲覧の制限か)、図書館の自由問題の本家本元であるアメリカではその文脈においた報道は(finalventさんが見た限り)なかったようです。

 

正直、「アンネの日記」の破損がここまで国際的な(SWCが声明を出すという行為により)報道のなされるものだという意識が私自身になく、それは第二次世界大戦後の平和主義てきな日本で育った若者だからかもしれません。一歩引いて海外の報道を見ると、その違いに驚き、それが新鮮でとても面白く感じました。

 

 

と、上記のようにクラウドファンディングと関係のないところで大変興奮してしまっていたのですが、クラウドファンディング自体は成立し、無事寄贈の手続きを進められているようです。

被害状況もきちんと調査され、それに則って進められていますが、「アンネの日記」関連本は他の方からも多く寄贈されているでしょうから、それ意外の手段、寄付金などで支援したほうが図書館にとっては使いやすいのではないかなと思いました。事件前より後のほうが「アンネの日記」関連本が増えてそうですよね。それでまた被害者意識がとか言われるたらたまったもんじゃないですが。

 

個人的にクラウドファンディングという行為には思う所は多々あります。良くも悪くも素人の行為なので、それが善意によってきちんと運営できれば良いですが、詐欺行為も可能ですし、「森の図書室」のように違法行為がなぜか市民権を得ているところがあります。これは市民が法について無知なことも大きいと思いますが、教養と啓蒙という論点で公共図書館に繋げることもでき、それはそれで興味深くもあります。

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2014年

6月

18日

学ぶべき人が勧める本にハズレはない

 

情報過多な時代においては良質な書評(あるいは自分の好みに合う書評)の書き手を見つけることが大事だと、私は思います。同時に、尊敬する先生や先輩、面白い人だな、頭の良い人だなと思う友人など、自分が学びたいと思える人が勧めてくれる本は、思っている以上に自分に良い影響を与えてくれたりします。

書評ブログとして名高い「スゴ本」さんの新入生向け読書リストも、もう新入生はとっくに過ぎてしまいましたが、不勉強な自分の読書リストにぴったりでした。

学生時代はサークルばかりでほとんど本を読まなかったのですが、それでも必読3冊は読んだ覚えがあった(うち2冊は買ってた)ので、ちょっとびっくりしました。本の内容はあまり覚えていないのですが、無意識に書いてあるような思考をすることが多く、自然に血肉となっているのかなと思います。良書ってそういうものなのでしょうね。

 

1. 『理科系の作文技術』木下是雄(中央公論社)(スゴ本さんのレビュー

2. 『知的複眼思考法』苅谷剛彦(講談社α文庫)(スゴ本さんのレビュー

3. 『アイデアのつくり方』ジェームズ・ヤング (TBSブリタニカ)(スゴ本さんのレビュー

 

買ったことがあったのは「知的複眼思考法」と「アイデアのつくり方」。「知的複眼思考法」は授業の教科書(副読書?)に指定されていたから、「アイデアのつくり方」は大学でテクニカルライティングを教えていた先生の勧めで。

基本となる本をきちんと大学で教えてもらっていて、恵まれていたなと思います。勧められていても手に届く範囲にないとなかなか手に取れないので、ぜひ大学の図書館と購買には常備してほしいです。

 

 ちなみに私がリストに加えておすすめしたい本(で今ぱっと思いつくもの)は

『「最悪」の医療の歴史』と『統計でウソをつく法』(もしくは『ヤバい経済学』)です。

 『「最悪」の医療の歴史』は書いてある内容が素晴らしいというよりは、自分が生きている時代を俯瞰する1つのきっかけになると思って勧めます。医療にかぎらず、教科書に書かれている内容が、あるいは先輩に教えられた内容が正しいと”盲信”することのないように。内容はスプラッタ映画よりグロいので、苦手な方はお気をつけて(私は最後まで読めませんでした)。誤字脱字や出典に不備がある点も否めないので、話半分で読むのがおすすめ。

デザインやプレゼン系は他にたくさんあるので、いつか整理したいな。

 

以下、リストの中で読んだことがあった本と今後読んでみたい本(メモ)。

 

読んだことがあった本

10.『レ・ミゼラブル』ヴィクトル・ユゴー(岩波書店)

44.『夕凪の街桜の国』こうの史代(双葉社)

55.『人間臨終図巻』山田風太郎(徳間書店)

89.『論理トレーニング101題』野矢茂樹(産業図書)

91.『知の技法』小林康夫(東京大学出版会)

92.『日本人の英語』マーク・ピーターセン(岩波新書)

94.『堕落論』坂口安吾(新潮文庫)

97.『理系のための研究生活ガイド』坪田一男(講談社)

 

時間があったらとりあえず読んでみたい本

29.『アンナ・カレーニナ』レフ・トルストイ(光文社古典新訳文庫)

50.『愛するということ』エーリッヒ・フロム/鈴木晶訳(紀伊國屋書店)

93.『疾病と世界史』ウィリアム・マクニール(中公文庫)

99.『銃・病原菌・鉄』ジャレド・ダイアモンド

100.『レトリック感覚』佐藤信夫(講談社)

 

 

ノンフィクションやサイエンス、古典に全く食指が動かないのは良くない癖だと自覚していますが、それでも読みたくないものは読みたくないので、その気になるのを気長に待ちたいと思います。。

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2014年

6月

14日

2013 Winter * Disney Land *

 

 

訳あって初めての1人インパをしたときの写真。まだCanonを買っていなかったので、OLYNPUSのE-PL1Sを使用していました。

1人だしゆっくりでいいやと余裕を見ていたら、午後のパレードだと夕日になって微妙な写真になってしまいました。暗いし。冬は午前中に行かないとですね!

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2014年

6月

14日

Jimdoでウェブサイトを作成してみました

自分の書いたものや発表したものの記録を残しておきたくて、ずっとウェブサイトをつくりたいなーと思っていたので、つくってみました。

サーバーを構築する必要がなく、ブラウザから使えるWebサイトビルダーで日本語のものではWebnodeとJimdoがあるようです。最初はWebnodeを使ってみましたが、イマイチ使えない(日本語フォントが変えられないのが不便だった)のでJimdoを使ってみることに。

Jimdo、今まで使った中で一番使いやすかったです。すごい。

とりあえずJimdoでつくってみようと思いました。

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